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11月22日~12月17日掲載 日本テレビに見る企業責任―再び株式会社による病院経営について

日本テレビに見る企業責任―再び株式会社による病院経営について

 やや高齢の男性陣が、神妙な顔をして鎮座している。何かと思えば、例の日本テレビプロデューサーによる視聴者買収行為についての説明であった。テレビは視聴率が命だという。くだんのプロデューサーは、「ビデオリサーチ」のモニター世帯の割り出しを1998年ごろに思いつき、その割り出しに二つの興信所を利用した結果、割り出した十数世帯に番組視聴を依頼し(ビデオリサーチのモニターで承諾したのは3世帯のみ)視聴率を人為的に上げようと工作を行った。しかも謝礼を含む一連の行為のために制作費を水増し請求していた…というのが事件のあらましである。要は視聴率が欲しいために不正に流用したお金を使った、ということになる。果たして、最初にこの事件を聞いて本当に驚いた人はどれくらいいるのだろうか。私はちっとも驚かなかった。そういう類のことは以前にも聞いたことがあるし、多かれ少なかれ皆やってるような気がするからだ。えーっ、ホントに皆知らなかったの?と実はしらじらしい気分。もちろん、それほどまでに視聴率を気にするのが仕事である人々と、単なる娯楽としてテレビ番組をとらえ、視聴率などほとんど関係のない立場の自分とは明らかに違うのかもしれない。しかし、会社の金の流用だって銀行や証券会社などお金を扱うところでは頻繁に起きており、麻痺しているといってしまえばそれまでだが、それほどの大事件とは思えないのだ。CEOと代表取締役と社長の区別もろくにわからない私だが、とにかく当事者は懲戒解雇、役員は降格や減俸という処分が発表された。しかしワイドショーなどではそれでもまだ足りない、もっと厳しい処分を、といった論調であった。これを見て思ったのは、やはり企業に対する目は厳しいな、ということだ。あの雪印も、古い牛乳を再生したという、皆がやっている程度のことで倒産の憂き目にあった。ここ数年、どれだけ多くの頭下げまくりおじさんを目にしたことか。下げた頭の薄い髪の毛を眺めたことか。見るほうは慣れてしまっても、いい年をして頭を下げなければならない側はやはりつらいだろう。誤っても誤っても許されない厳しさが、企業に対してはある。
 それに比べ、病院の生ぬるさはどうだろう。考えられないミスで人を死に至らしめ、あげくの果てはカルテの改ざん、説明逃れを繰り返してきた。最近になってようやく一部の病院で医療ミスに対する真摯な努力を見せるところが出てきたが、残念なことにまだまだ少数派に過ぎない。聖域といわれて保護され続け、公定価格に守られ、効率化アップや顧客満足という努力を怠ってきた病院の、その経営については不思議なことに株式会社参入がいまだ認められていない。小難しい議論ばかりを繰り返して、いっこうに進展していないのが現実である。株式会社の悪いところばかりをとらえ、やれ金儲け主義だの営利優先だのと、まるで自分達が利益の利の字も口にするのは汚らわしいといわんばかりだ。もし、病院を経営する企業が医療ミスでも犯したら、それこそ世間な許さない。それでいい、その厳しい視点こそが今の病院に最も必要とされているものである。私は、その種の審議会にも参加しておらず、株式会社の人間でもないが、公の場で株式会社参入賛成を口にする人種として珍しがられることがある。それでたびたび取材を受けるようにもなった。その後匿名の嫌がらせメールが来たり、医療の人間とは思えない、といった発言を受ける事態にも遭遇している。発言は自由だが、匿名などは卑劣極まりない行為だと思う。審議会や討論に加わっているのは医師会はじめほとんどが男性である。理屈ばかりこねて、保守保身に走りがち、有言無実行の典型であり、良いところに目を向けず悪いことばかりを口にする後ろ向きな態度、文化も歴史もまったく異なるアメリカでの失敗例を得意気に紹介し、何かあれば医療は聖域だと言って逃げ場を作り、みっともないこと甚だしい。日本人男性の悪いところをすべて露呈している。こういう状況を「閉塞感」というのだ。何もせずにただ議論ばかり。結局何の変化もない。アメリカの医療はひどいが、変化も早い。悪評高いHMOだってここ10年余りの新しい保険制度であり、今やその評価と反省の時期を迎えているのだ。
 とにかく恐れずに一度「やってみる」ことをしたらどうだろうか。株式会社の経営者はいわば経営のプロである。医療人は医療サービスの提供に専念できるよう、経営のプロは皆が働き甲斐のある、そして患者満足度の高い病院経営に努力してもらうようにすればいい。病院の白い壁や暗い雰囲気も変わる、医療ミスを起こしたら終わりだという気迫が生まれる、混乱もあるが変化もある。「失敗は成功の母」を死語にしてはいけない。失敗を恐れずにむしろ保護から外れることで患者の意識も医療者の姿勢も変わる可能性がある。その可能性に賭けるのだ。改めて言う。株式会社の参入や混合診療を認めよう。異業種の力を恐れずにむしろ企業パワーを活用し、真に患者のための病院作りに邁進しよう。そう決めてから、評価方法など細かいことを論ずればいいのであって、議論の順番を間違えるから何も進まないというシンプルな事態を、今こそ医師会や厚生労働省らは認めるべきだと思うのだ。

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