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3月12日 減らない医療過誤05 医療従事者が足りない

医療従事者が足りない

 日本病院協会が2000年にまとめた調査結果によると、医療事故の報告件数は未然に防いだ場合を含め一病院あたり年間約130件だという。
 日本の病院数は2000年時点で9,266数(診療所・歯科を除く)、単純に130をかけると年間12万件以上の医療事故が、未遂を含め全国いたるところの病院で起きていることになる。
 このシリーズを書いているさなか、たまたま埼玉県済生会栗橋病院副院長、本田宏氏の話を聴く機会があった。本田氏は、日本の医療過誤を考える上で非常に貴重な提言をし続けており、それはまさしく現場からの悲鳴でもあった。
 本田氏の講演内容やいくつかのデータから、日本における医療過誤の原因はどこにあるのかを考えてみたい。
 日本の医療過誤はなぜ頻発するのか。それはまず「人手不足」にあるという。
 たとえば看護師の人員は、法律上4人の入院患者に対しひとりの、外来では25人の患者につきひとりといった基準がある。
 この数字だけではピンと来ないが、この規定が昭和20年代のものであり、以後増員がない事実を考えて欲しい。昭和20年代の死亡原因第一位といえば結核である。
 「安静」と「衛生環境の改善」が主たる治療であった時代だ。高度な医療機器もなく、疾患も主に感染症に限られている頃に決められた人員基準をそのまま持続させていれば、どこかに綻びが出てくるのは当然であろう。
 一度でも入院経験があれば、病院で働く看護師や医師らの多忙さを直に見ることができる。
 夜0時以降は、およそ40床を抱える病棟でもふたりの看護師と当直医だけ、仮眠どころか座る間もないほど忙しい夜も珍しくなく、入院患者の中には暗い廊下を何度も行き来する足音に不眠を訴える人もある。
 ほとんどの患者の急変は昼間ではなく夜中から朝方にかけて起こる。それが分かっていながら、その時間の人手は1日のうち最も少ないのだ。
 ホテルのラウンジやサロンのような病院で働く欧米の医師たちは、日本の病院や働く人々の様子はクレージーとしか映らないらしい。日本の医療従事者数は人口当たり欧米の半分以下であり、同じ規模の病院どうしの比較ではアメリカの8~10分の1に過ぎない。
 また、日本の入院ベッド当たりの床面積はアメリカの4分の1の広さしかないが、人口当たりのベッド数は米国の3倍以上、平均入院日数も日本は世界一長い。つまり狭い病室に長い間入院している数多い患者を、極端に少ない人手で治療したり看護したりしていることになる。
 日本の医療を取り巻くインフラや人的環境がいかにお粗末なものかは、こういったベーシックな数字からも伺える。
 非常に単純な構図だが、日本の医療過誤は、技術の高度化がどんどん進んでいるにもかかわらず、人手が圧倒的に足りない状況が大きな要因になっている。
 医療従事者が足りない―不思議なことに現在繰り広げられている医療制度改革案の中でこの点に触れられているものはほとんど皆無である。それは何故なのだろうか。

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