医学博士・医学ジャーナリスト
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植田 美津恵
日本の医療・福祉・健康を考える

Production著作/論文

コラム「がんについて」コラム「がんについて」の連載。

8月21日 「がん」について 40
予防を真剣に考えよう

 がんは、治療も大事だが予防こそがこれからのキーワードである。
 北海道大学名誉教授の小林博氏は、がんになりやすい人として、別表の5つをあげている。
 1については多くの説明を要しないだろうと思うが、とにかく禁煙は何より真っ先に行うべきがん予防行為であることは確か。こう断言すると、ヘビースモーカーからの、喫煙者でも健康な人はいくらでもある、という反論が聞こえてきそうだが、これらはすべて「リスク」の程度から導き出されているため、例外は除外、あくまで確率的に・・・・といった話になってしまうことをお断りしておく。
 2については、例えば肝臓がんがその一例で、B型C型肝炎感染者は高頻度で肝臓がんを発症することがわかっている。この現実と日本に滞在する感染者の多さを考慮すると、国の対策がまだまだ手ぬるい点が気になるところ。
 3の遺伝子変異については、ある特異な家族歴を有する人への警告であり、現在のところあまり一般的とはいえないが、遺伝子変異はがん成長の大きなキーポイントであることは確かなため、今後の遺伝子解明研究に期待したいと思う。
 4は一部の病気を経験した人は、あるがんになりやすいために注意を要するという意味であり、たとえば大腸がんなら大腸ポリープ、肝臓がんは肝硬変、口腔がんは白斑症などがあげられ、これも大腸ポリープがすべて大腸がんになるわけではなく、発症の危険度が増すということである。
 5については、一度がんになった人は、たとえそれが完治したとしても再びがんになる可能性が高い、といった事実に基づいている。
 この場合は、以前にかかったがんと同じ場所にできるとは限らない点が要注意だろう。

【別表】 がんになりやすい5つの条件

  1. ヘビースモーカーで喫煙率の長い人
  2. がん関連ウィルスに感染している人、過去に感染したことのある人
  3. 遺伝子にある種の異常、変異を持つ人
  4. 「前がん病変」を持つ人
  5. かつて、がんになったことのある人

 いくら予防に気をつけていたとしても、二人に一人の確立でがんになる時代はすぐ目の前に来ている。
 つい先頃、日本の平均寿命が男女とも上昇したニュースがあった。女性は前年より0.63歳延びて84.62歳、男も0.54歳の延びで77.64歳となり、両者とも世界一であり、かつ過去最高の数字とのこと、これを耳にしたとき真っ先に頭をよぎったのは、やはりがん患者は増えるだろう、という思いだった。平均寿命の長さが国の豊かさを象徴する指標ととらえられ、単純に喜んだ時代は過ぎた。
 がんのみならず手に負えない疾患の存在や寝たきり状態になることへの不安が先走り、なかなか素直に喜べなくなっているのがどこか悲しい。自分はどんな病気になるのか、さすがに予見はできないが、手っ取り早いのは血族の病気を観察することだ。
 三親等までに多い病気にはやはり注意が必要で、自分も同じ病気にかかる可能性は高い、と言える。
 まずは身内のがん履歴をきちんと知っておくことから予防は始まるといってもいいだろう。

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