Production著作/論文
コラム「がんについて」コラム「がんについて」の連載。
治りやすい子宮がん
「女性は子宮で考える」...。
誰が言ったのかは知らないが、何となく納得できる気がする。
女性特有であること、子供の身ごもる場所であること、ホルモン分泌の影響にさらされていることなど、どこか神秘的イメージを抱かされるのが子宮。
つまり、男性にはわからない(実は女性自身にも理解できない)女性心理のメカニズムの秘密があたかもそこに隠されているかのようである。
しかし、非常なことにそんな場所にもがんはできる。
ただし、最も治りやすく予後のいいがんといわれ、他のがんが、羅患率死亡率ともに概ね増えているにも関わらず、子宮がんはどちらも減少傾向にある。
子宮がんにもその部位によって「体がん」と「頚がん」があるが、がんのできやすい年齢や症状、診断方、治療方などに大きな差があるといわれる。表に示したのは両者の違い、特になりやすいタイプについて簡単にまとめたものだが、これはあくまでも統計上の話しで、こういった事項にあてはまらないからといって安心できるものではないし、逆にすべての項目に該当するからといって必ずしもがんになるとはいえない。
最も治りやすいがんといっても、早期に発見できなければ、がんは進行してく。
がんが子宮周辺の骨盤や膣壁、腰椎、大腿骨などに転移をすれば激しい痛みに苦しむことになる。さらにがんが膀胱や直腸まで及べば血尿や血便が出る。
年間がん死亡のなかで約5%弱が子宮がんによる死亡であるから、子宮がんで亡くなる人がいないわけではない。やはり小さな症状を見逃さず、早めに受信することが決め手となる。
子宮頚がんの初期症状は、不正出血である。つまり、生理でもないのに、あるいは性交後に出血したら、要注意。出血には誰もが敏感になるので、びっくりして受診するきっかけとなりやすい。子宮がんが早期に発見されやすいのは、目に見える出血という、他のがんよりも初発症状をキャッチしやすい性質があるからで、これが結果的に治りやすいがんと言われる理由のひとつだろう。
子宮体がんは、頚がんと違って中・高年齢者に多いが、これも不正出血や月経過多が最初の症状である。
また人によってはおりものが増えることもあるので、通常と違う「何か」を感じたら、恥ずかしがらずに検査を受ける方がいい。
ある女性が閉経を迎え、いわば人性の終盤にさしかかったことに多少の憂いを覚えている。
ある時、とうに終わったと思っていた月経をみて、嬉しさのあまり親しい友人にそのこと伝える。もう一度自分にも春が訪れたようだという歓喜の手紙を友人は受け取る。
しかし、半年後にその女性は死んでしまう。出血は月経ではなく子宮がんの証拠だったのだ...。
松本清張氏の小説で、こんな内容のものを読んだ。
松本氏は女性不信だったといわれるが、この小説では、再び女性になれたと喜ぶ女性を見る氏の目は残酷でもあり、どこか優しくもある。
「女性は子宮で考える」と松本氏は信じていたように思える。