医学博士・医学ジャーナリスト
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植田 美津恵
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Production著作/論文

コラム「がんについて」コラム「がんについて」の連載。

1月16日 「がん」について 10
大腸がんとポリープ

 大腸ポリープも、大腸がんと同じようにここ20年間余りの間に急速に増えてきた。
 大腸ポリープとは、きのこやイボのような形をした腫瘤(しゅりゅう)の総称で、大腸だけではなく管腔(かんくう)臓器にできる良性のできものを指す。
 大腸ポリープには10種類ほどのタイプがあり、その大変は放っておいても悪性化することはないが、少し注意が必要なのは、この中の「腺腫(せんしゅ)」と呼ばれるもの。これも基本的には良性腫瘍だが、遺伝子変異や他の刺激によってポリープが一部がん化することが分かっている。

 ポリープの代表的な形とは
 1.有茎製(きのこ状に突出し、根本がくびれているもの)
 2.無茎性(半球状に隆起した形で、根元にくびれのないもの)
 3.平盤状のもの(低く平らに広がったもの)
 4.隆起+陥凹(無茎性や平らなポリープの中心に窪みがあるもの)
 -の4種類がある。

 どのポリープががん化し、どれががん化しないのか、ということについては、その形状からみる限りでは「比較的小さな有茎性のポリープ」であれば、がん化の心配はいらないといわれている。逆に1センチ以上のものや無茎性または平盤状のもの、隆起+陥凹タイプのものなどはがん化の可能性が高い。
 幸いにも、茎があってすぐにとることができる状態ならば、ポリペクトミーといって内視鏡を使って簡単に焼き切ってしまうことができる。焼き切ったポリープをよく調べてみると、表面だけではわからないが中の組織がすでにがん化していることもあり、基本的にポリープは発見された時点でとることが望ましいというのが一般的な考えである。
 大腸ポリ-プによる自覚症状はほとんどない。症状がないのに、たとえ良性であっても何かができているといわれれば、ギョッとするのが普通だろう。
 しかし、このポリープは頻繁に発見され、しかも簡単に内視鏡で治療できることからも、それほど深刻に考える必要はない。ただ、一度ポリープができた人はポリープのできやすい体質であるといえ、治療後も定期的な検査を受けたり、日常生活においても便秘を防ぐように心がけることが大切になってくる。
 このポリープも、大腸がん同様「便潜血検査」で発見できる。ほとんど自覚症状はないが、直腸やS状結腸に1センチ以上のポリープができた場合、ポリープが便にこすられて出血することがあり、この検査でその出血の有無を見つけることができる。
 ただし、その時点ではがんなのがポリープなのかわからないため、いずれにしても大腸内視鏡検査を受ける必要が出てくる。大腸内視鏡検査を嫌う人は多い。前処置も大変だし、おなかが張ったり苦しかったりもする。上手な医師にうまく当たればいいが、そうでなければ、もう2度とやりたくないと思う羽目になる。
 便潜血検査プラス他の検査、つまり内視鏡検査にいたる前に、さらにがんのハイリスク者を絞り込める検査法の開発に成功すれば、受験者も医療者ももっと楽になるだろう。

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