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2005年5月17日~5月30日掲載 安易なガイドラインこそが危ない

安易なガイドラインこそが危ない

 5月2日付日経新聞に「頭痛の悩み 専門医が診断」のタイトルで、「慢性頭痛」を正確に診断・治療する専門医を日本頭痛学会が認定するという内容が発表された。「慢性頭痛」とは、脳梗塞とか脳血栓のように、深刻な病気ではないのに頭が痛い症状のことで、3種類に大別されるらしい。ずきずきした激しい痛みを生じる「片頭痛」、肩や首筋のコリを伴う「緊張型頭痛」、決まった時期に起こる「群発型頭痛」で、最も多いのが「片頭痛」と「緊張型頭痛」の混合型だといわれる。実際、日本人の4割が慢性頭痛で悩んでいるそうだが、緊張型頭痛などはパソコン世代にとっては日常の悩みの種だろう。1998年には「全国慢性頭痛友の会」が発足し、現在700名の全国会員で構成されている。サイトには、慢性頭痛に悩む方の日記や経験があちこちにあり、その苦悩や、ときにはユーモラスな闘いぶりを知ることができる。頭痛に限らず、万人に効く薬はないことから、結局は色々な鎮痛剤を試すことになり、医学は進歩しているといっても慢性頭痛の原因はおろか治療法さえ確立されていないのが現状である。古来から存在するのに治療法がないという点では風邪と同じということだ。さて、記事の内容は「頭痛の専門医を頭痛医として認定する」、「慢性頭痛の診療ガイドラインを作成する」ことにより、患者の悩み解消につながるといったもの。科別ではなく、症状別のガイドラインは珍しいことから、多少は「患者中心」のように見えるが、根本的な考え方は間違っているように思える。慢性頭痛の解消法は、「自分にあった適切な鎮痛剤を見つけ」、「ストレスや疲労などを避け」、「リラクゼーションを試み」、「頭痛と上手に付き合う」ことに尽きるようだ。さらにそれ以前に、重篤な脳血管疾患との鑑別を早期に行うことが絶対不可欠である。とすれば、慢性頭痛の対処に必要なのは、専門医ではなくむしろ一般医の役割であるはず、診断してもこれといった治療法がないなら(恐らくは確固とした治療法は生まれない)、ガイドラインを作っても慢性頭痛の解消にはつながらない。慢性頭痛に悩む人は、「診断」後の慢性頭痛からの開放こそを切に期待しつつ、鎮痛剤に依存する精神的ストレスから逃れたいのである。厚労省は何かというと「学会」を持ち上げ、「ガイドライン」を作ることで安全なところに身を置くことと引き換えに、疾患の多様性と他の治療の可能性をつぶしてしまう。 ここからも、今の医療に必要なのは、専門医ではなくむしろ一般医(かかりつけ医やホームドクター)であるはずなのに、医学教育改革をせずにガイドラインばかり作ってお茶を濁しているのだ。 医学が進歩したというより、診断学のみが進歩し患者の苦しみや訴えは置き去りにされている。仮に、リラクゼーション効果を期待できる「東洋医学」「インド医学」など西洋医学以外の医療とのダイナミックな融合を図ることで、慢性頭痛に代表されるストレスが深く関与した現代病はかなり解決できるように思う。しかし現実は、いずれの取り組みからも逃げ、重い腰をあげようとはしない。これではせっかくの症状別ガイドラインも、結局は自己満足の産物で終わってしまうに違いない。

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