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コラム「一刀両断」のご案内です。

2005年4月8日~4月28日掲載 企業を監視するということ

企業を監視するということ

 経済に疎い者でも、さすがに最近のニュースから、株とか買収とか市場とか、あるいは議決権とかストックオプション、M&Aなどという経済用語にかなり馴染みが出てきたのではないだろうか。小学生の中にも株に関心を示す者が目立ちだし、内外ともに市場が活性化しているように、一見見てとれる。このような動きを背景に、新潟大助教授の山田剛志氏から、アメリカ並みに経営者の職務執行を監督する「独立取締役」を導入すべきだという声があがり、同様の主張、つまり企業や経営者、役員らを監視する機能を強化しようとする動きは除々に高まりつつあるようだ。もちろんそこには、三菱はじめ西武鉄道の一連の不祥事に対する厳しい視点があり、「資本市場を守る」ことこそ何より大切だとの市場最優先理論がある。私は昨年、従業員100人前後の小さな企業の代表取締役に就任した。会社も社長もホヤホヤの1年生である。企業をめぐる最近の慌しいニュースにはおのずと興味をそそられ、また勉強もしなければならないと緊張を強いられる日々である。そんな私から見ると、昨今のように上場企業に対する監督や監視の重要性を声高に求められる状況が続くと、正直うんざりする。もちろん我が社は上場企業ではないので関係ないといえばそれまでだが、一部大企業の不祥事から生じる規制強化の余波は確実に中小企業にも及び、経営者の椅子は何と窮屈なものだろうと感じる機会はますます増えていくようだ。一部の企業経営者は、社員から、または株主から「監督」されなければいけない状況にあるかもしれないが、ほとんどの経営者は毎日一生懸命業務を遂行しようとしている。一瞬たりとも仕事のことが頭から離れることはないし、人と金の問題はいつでも悩みの種である。一方でリーダーとはこうあるべきといった「べき論」を意識せざるを得ず、社員たちが働きやすい職場環境を目指したいとの思いも強い。最近では少子化社会への対策として、育児休暇や介護休暇なども充実させねばならず、社員のメンタルヘルスをマネージメントするのも企業の役割だといわれる。そのくせ経営者自身は休日を取るのも容易でない立場にある。最初から悪いことをしてやろうとかサボろうと思いを巡らす者などほとんどいないだろう。それなのに、会社は株主のものだと当たり前のようにいわれ、内部監査だけでは不十分でさらに独立取締役なるものを置けと指摘され、まるで最初から犯罪者扱いだ。日本のベンチャー、つまり新興企業が育たないのは、失敗を認めない日本の風土やベンチャーキャピタルという職能の未熟さ、あるいは保守的で官尊民卑がはびこる社会文化などが弊害になっているためだ。非常に稀ともいえる不祥事が起こるたびに監視体制や規制の制度を作っていけば、いずれ市場そのものが閉塞感に覆われ、上場するメリット自体が損なわれてしまう。企業の活性化や新事業への取り組みの足かせにもなりかねない。多くの大学教員は一般企業で仕事をした経験がなく、いわゆる「現場」を知らずに理想のみを説く傾向が強い。アメリカの例を参考にするのも結構だが、私から見れば「いい気なもんだ」と言いたい気分。海外の例を紹介するのも今後のあるべき姿を理論武装して語るのも勝手だが、専門家の狭い視点でのみ提言することなど所詮「知れている」のだ。予想外の物事が起こり大騒ぎになったときこそ、メディアや世論や評論に惑わされずにじっと嵐の行く末を見すえ、怒涛のなかでいかなる判断を下すのがベターであるかを思慮する冷静さが大切だと、常に自分を戒めている。

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