医学博士・医学ジャーナリスト
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植田 美津恵
日本の医療・福祉・健康を考える

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コラム「一刀両断」コラム「一刀両断」の連載。

2005年3月30日~4月7日掲載
医師免許更新制度反対の非常識

 医師免許更新制度の話題がチラホラ目につくようになった。おおまかな動向を以下にまとめる。新しい技術や発見がどんどん生まれている医療界のなかで、いったん取得した医師免許に対し更新制度や再教育制度を取り入れようといった考え方は以前からあった。今回は、規制緩和を進めていくなかでこの制度の導入を検討しているという動きが明らかになり、例によって一部医師から猛反対の意見が続出している。一方で、医師会の上層部は、これも時代の流れと受け止め前向きに考えたい意向を示しているものの、更新制度は医師会主導で進めたい旨を強く希望しているのが現状。相も変わらず医師連中は新しい動きがみえてくるとこぞって反対の意を表明し、駄々をこねる構図ができつつあるといったところ。新しい薬が次々に発売されているにもかかわらず、古い情報しか持っていないためにいつも同じ薬しか処方できない者。誰にも失敗はあるものの、手術や治療の失敗を繰り返し、平気で診療を続ける者。これだけ健康食品やサプリメントの人気が高いのに、頭からそれを否定する者。新しい検査や治療法についてまったく勉強しない者。そのくせ、周囲への態度は変わらず横柄な者。どこの世界にも存在するこのような輩が一部医師の中にもかなりの比率で跋扈している。医師がこの世のなかで一番偉いとばかり、医師でない人間を認めようとせず、きちんとした挨拶もできない。実際、一緒に仕事をしていこうというときに、ものすごくやっかいなのが医師でもある。「なぜ医師だけが免許の更新をしなければならないのか」と馬鹿丸出しの発言も聞かれるが、医師という命に関わる仕事だからこそ免許の更新制くらいのシステムは必要なのだし、むしろそれくらいのプライドがあるなら、とっくにみずから襟を正さざるを得ないような制度を導入していてもおかしくはないはず。もちろん、医師だけでなく看護師や薬剤師、臨床検査技師、あるいは弁護士や教員など免許の必要な職種についてはすべて更新制度を取り入れてしかるべきではないだろうか。どこの世界も同じだが、医療界にも矛盾は多い。問題は、医療を聖域と位置づける時代が長く続いたために、その矛盾を常識的に解決しようとしてもできないところにある。社会常識が通じないのが医療や医師の世界。これはやはり、自分の健康は自分で守るしかないことをしっかり肝に銘じるのが賢い国民の生き方だろう。

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