医学博士・医学ジャーナリスト
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植田 美津恵
日本の医療・福祉・健康を考える

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コラム「一刀両断」コラム「一刀両断」の連載。

6月27日~7月7日掲載
「フリーター対策」は天下の愚策

 厚生労働省などの4つの省庁が、「若者自立・挑戦プラン」と名づけ、3年間を目標にフリーターや失業者増加に歯止めをかけようと対策を打ち出した。おいおい、やめてくれー!と思わず大声で叫びたい気持ちである。と同時にその中身を恐る恐るのぞいてみた。「学校教育でのキャリア形成・就職支援」「若年労働市場の整備」「能力の向上による就業選択肢の拡大」「若年者の就業機会創出」「官民協同の地域就職支援センター」だって。フン、案の定、いずれの項目もとってつけたようなお役所言葉でみちあふれ、歯が浮きまくってしまった。結局具体的に何をやるのかわからない。それでも各新聞の社説など、意外にも反論が見当たらないのは、確かにフリーターの増加はちょっとやばいかなと誰もが感じているからかもしれない。学校卒業、あるいは退学してすぐに、きちんとした社会人教育を受けにくく、いやになったらすぐにやめられるような職場で働くことに対する危惧は確かにみんな持っている。あまりにもったいない。若いときに職業をきちんと持つというのは、言葉ではいい表せきれないとても大切なものを秘めている。鉄は熱いうちに打て、という諺どおり、挨拶や責任感、言葉使いから他人との接し方、学校教育の空疎さ、大人のいいところや悪いところまであらゆることを学ぶ機会の第一歩である。しかし、2000年にはフリーターが200万人を超えたという。このままじゃ、日本の若者どうなるの?といった不安が根底にあるのも無理からぬこと、フリーター対策は、いかにも国民にとって大事な政策とばかりの「ええかっこしい」で打ち出されたわけである。このままでいいと思っているわけではないが、しかしあえて国がやることだろうか?閉塞感をもたらし、国民の信頼を得ているとは思えない日本国の官僚や政治家らが、フリーター対策なんて、チトおこがましいのではないだろうか?どこか嘘くさいし何よりうまくいくとは思えない。若者は、目標が持てずに苦しんでいる(若者だけではないが)。大人を、未来を、そして自分を信頼できずに迷っている。いつの時代も若者とはそういうものだ。もしかしたら、フリーターというのは、現代流の精一杯の反抗かもしれない。フリーターとて、目標があったり好きでそうしている人は稀である。ほとんどはやはりどこか後ろめたいのだ。でもいいじゃないか。とにかく一生懸命働いているのなら、とりあえずヨシとしてもいいと思う。少なくても、国の対策に乗っかるよりはずっといい。フリーターをなくそうというより、周囲の大人たちがフリーターの体験を生かせるような環境をさりげなく作ってやるほうがずっと彼らは報われる。フリーターである彼らたちを、日々優しく厳しく見守る人々がなるべくたくさん存在することが必要なのであって、決して「縛る」性質が色濃い国の対策がまずありき、ではないはずだ。国の制度というのは「保護」を目的とする側面を常に持つ。「保護」を言い換えれば「飼育」だ。若者よ、安易に国に保護を求めてはいけない。自分ひとりで考え、自分で立ち上がり、自分で歩いていくしか道はないのだということを痛いほどに感じて欲しいのだ。フリーター対策とは、若者を骨抜きにする愚策である。予算をつけてわざわざそうすることは、結局国の堕落につながっていく。

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