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7月25日~8月1日掲載 院内感染対策、ホントにこれで大丈夫?

院内感染対策、ホントにこれで大丈夫?

 院内感染の報道は忘れた頃に飛び込んでくる。院内感染とは、病院に入院している間に本来の病気とは関係のない感染症にかかり、最悪の場合は死にいたる、というもの。院内感染の元凶は「抗生物質」にある。1928年、イギリスのフレミングがペニシリンを発見して以来抗生物質は飛躍的に発展し、1944年にはストレプトマイシンが登場、結核治療薬として重宝されたのは周知のとおりである。今や、抗生物質なくしてはほとんどの病気の治療は成り立たないという思い込みがあるが、実はその思い込みこそが院内感染を引き起こしているのだ。抗生物質を使いすぎると、次第にどんな抗生物質も効かない菌がはびこる、いわゆる耐性菌である。これらが高齢者など免疫力の低下した患者に日和見感染を引き起こし重篤な状態に陥れる。さらに悪いことに、病院とはもともと病人ばかりの空間、みな健康体とはいえない。あっという間に人を介して耐性菌が広がっていき、集団感染につながるという経過をたどる。院内感染対策とは、医師らが抗生物質の正しい使い方を実践することと、院内の手洗いとマスクの着用など医療従事者個人個人が清潔に気をつけること、に尽きるといっていい。ところが、こういったことが遅々として進んでいない。対策はわかっているが、それだけの意識がなければどうにもならない。特に抗生物質、つまり薬剤投与は病院の収益と密接に結びついているため、なかなか適正使用というわけにはいかない面もある。
 ところが、院内感染は管理者にとっては重大問題。一度マスコミに報道されると、医療事故同様患者の信頼は一度になくなってしまう。そこで、厚生労働省はより具体的・効率的な対策を打ち出すために「院内感染対策有識者会議」を設置した。厚生労働省お得意のやり方だ。が、この「有識者」というのが曲者なんだなぁ。有識者って何だろうと常々思っていたので、メンバーを調べてみた。それぞれの肩書きは、病院の名誉院長(会議の座長である)にはじまり、大学の公衆衛生学教授、職能団体の常務理事、病院外科部長、病院薬剤部長、法学部教授、などなどがずらりと並ぶ。私はいずれの人とも面識がないし、こういう人々を不要といっているのではない。しかし、たとえば院内感染が報道された病院の関係者が見当たらなかったり、患者と一番多く接触する看護職や介護職が極端に少ないのはおかしいと思うのだ。かろうじて、メンバー22名中看護職が3名いるが、しかしうち2名は管理職であり、介護職にいたってはゼロである。繰り返しになるが、院内感染の技術的対策とやるべきことはわかっている。それが実行できないことが問題であり、この会議の何人かのメンバーはすでにその点をきちんと押さえている。今考えるべきことは、何故できないのか、という視点からあらゆる規模の病院の実態を明らかにし、具体的実行を促すことしかない。そのためには日々患者と接する現場の医師や看護・介護職らがもっといてもいいはずだし、院内感染が明らかになり、現在まで名誉を挽回すべく対策を実践してきた病院関係者がいてもおかしくはない。
 医療事故についてもそうだが、本気で院内感染対策を充実させようとすれば、教育カリキュラムの見直しからはじまって、人員の増員、診療報酬制度や薬価の検討にまで着手しなければならない。極端ではあるが、院内感染を引き起こした病院への罰則規定を設けることも、病院機能評価に院内感染例の有無を導入することもできるだろう。すでにそのようなことも厚労省はわかっているはず、やらないだけの話だ。現場を離れた有識者と呼ばれる人々からどんな意見が出、どんなりっぱな体制作りを図にしたところで、現場で実行されないようなものなら意味がない。下手すれば単なる税金の無駄使いに終わってしまう。対策や体制を検討するばかりでは、決して院内感染はなくならない。よもや有識者会議を設置しただけで満足して終わる問題でないことだけは確かである。

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