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4月30日減らない医療過誤12 問題の本質は人手不足

問題の本質は人手不足

 人の命を預かる仕事という点で、同じ責務を負っているパイロットも驚きを隠せない医療環境の劣悪さは、前回までに紹介したとおり。
 当たり前のようにいわれている「医療費の増加」さえもデータ的にあやしい。
 ましてや、その大義名分のもとに医療の分野でも企業なみの効率化、スリム化が進められているが、医療過誤の観点からいえばとにかく絶対的な人手不足を何とかしてもらわないと話にならない、というのが本当の本音である。
 昨年秋に大阪で行われたある講演会で、厚生労働省の医政局医療安全推進室長が「医療安全対策への取り組み」のタイトルで講演を行った。
 その概略を読むと、次のようにまとめることができる。厚生労働省は、医療事故を「人に由来するもの」「物に由来するもの」に分けた上で、前者は医療従事者の安全性に対する意識の欠如、組織的な取り組みの欠如を意味し、後者はたとえば医薬品や医療用具などの名称や容器が類似していることによって起こるとしている。
 しかしまず、このような単純な見方では医療事故がはらむ問題をただ矮小化しているだけではないか、と思えてならない。
 また、これまでの同省の取り組みとして、医療事故防止関連のマニュアル作成をあげ、安全管理体制の徹底を図ってきたことを主張する。
 しかしこれも、マニュアルどおりにいかない現実を無視してしまっている、と思えてしかたがない。
 さらに、研究班を設置し「ヒヤリ・ハット事例集」を作成させたことを強調し、研究面での実績をアピールしている(事例集の内容についてはすでにこの欄で紹介ずみ)。
 そして、「ヒューマンエラー部会」と「医薬品・医療用具等対策部会」を置き、それぞれの課題に対する取り組み方を考えていく、と述べるとともに、11月の「医療安全推進週間」で様々なシンポジウムやワークショップを開催し安全な医療を提供するための要点を標語形式にする、と締めくくっている。
 いやはや、こういった省庁担当者の声を拾ってみても、人手不足については一切触れられていないのはどういうことだろうか。
 標語など作っても効果のないことは、夥しく現存する「標語」の数々を見ても明らか、なぜ問題の本質に迫らずにどうでもいいことに時間と金と手間ひまを費やすのだろうかと不思議でならない。
 済生会栗橋病院の本田宏氏が代表幹事を務める「医療制度研究会」が行ったアンケートによると、絶対的に医師が不足している現状はもはや疑いのないところ、また看護師らがみずからが引き起こした医療ミスを真摯に反省しつつ人員不足を切々と訴えるサイトも存在し、いずれもその現実の重さに胸が詰まる思いがする。

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