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4月9日 減らない医療過誤09 看護婦から看護師へ

看護婦から看護師へ

 すでにお気づきの方もあるだろうが、このシリーズでは極力「看護婦」とはせずに「看護師」と表記している。
 これは、今年三月一日から看護職の名称が「婦」から「師」に変わったことを受けてのことである。
 名称の変更は、日本看護協会が平成三年から運動を続けてきた成果だという。他の医療専門職が「医師」「薬剤師」「臨床検査技師」など「師」となっているのに対し、看護職だけだ「婦」あるいは「士」であることが、いかにも一職業としての魅力に欠けるとの判断があったようだ。
 男女共同参画社会の実現を目指す昨今の社会的背景や風潮も後押しをした結果の賜物でもあるだろう。
 現役のナースの言葉を借りれば、医師や薬剤師同様、「師」とつくことが看護職全体のイメージアップや社会的地位の上昇につながるとのこと、それはそれで縁の下の力持ちといわれつづけてきた看護職にとっては朗報なのに違いない。
 類まれな政治力で看護職の地位向上に奔走したナイチンゲールもさぞ喜んでいることだろう。
 とにかく男女平等が当たり前の時代、このような呼び名の変化も致し方ないとは思いつつ、どうしても多少の寂しさはつきまとう。「白衣の天使」と言われ、その凛々しさにあこがれたのも今は昔、である。
 例えば医師に対し、なぜ医師になったのかと問うたとき、たいていの人は生家が医院だったから、あるいは親に勧められて、または偏差値が高かったから、などと答えるだろう。
 それに対し看護職を選ぶ人は、「人のためになる仕事だから」「手に職を持ちたい」などが多い。
 収入面や社会的ステータスにとらわれない熱い情熱を持って臨む人がまだまだ存在する稀有な仕事である。その反面、現実とのギャップに耐え切れず離職する人も多くあり、看護職は「燃え尽き症候群」なる言葉の生みの親でもある。
 今回の名称変更に関する附帯決議では、「…(看護職ら)それぞれの職種が果たしている機能の充実強化に向けて、教育環境の改善、人員増などの施策を講ずる」ことを政府に要請している。
 看護職の教育課程が専門学校から四年制の大学へと急速にシフトしていったのも、この決議文と同様の意図によるものだろう。
 しかし、大学制になったことで学校歴を欲することにのみ熱心な人材が集中したり、ベッドサイドではなく論文や研究にばかりいそしむ、頭でっかちな看護職が増えてきたことが、昨今の医療過誤増加と無関係ではない、との指摘もある。
 他の「師」がつく医療職と違って、精神面では患者に最も近かったはずの看護職が、学歴を得たり名称が変化したりすることで、一番大事な「ハート」までも失われることのないよう、切に願うばかりである。
 医療過誤の問題は、患者を守るために真剣に考えるべき課題であるのはもちろんだが、同時に日々コツコツ働く看護職を保護するためにこそ必要な取り組みである。

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