医学博士・医学ジャーナリスト
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植田 美津恵
日本の医療・福祉・健康を考える

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コラム「がんについて」コラム「がんについて」の連載。

9月4日 「がん」について 42
血液のがん

 白血病は、血液のがんといわれながらも、たとえば胃がんや大腸がんなどの臓器がんとは少し違ったイメージがある。
 白血病と比較して、臓器んを「固形がん」と呼ぶこともできる。
 血液は、血しょうや赤血球、血小板、白血球などで構成されるが、白血病は、血液中の白血球ががん化し増殖するがんであり、「血液のがん」というより、厳密にいえば「血球のがん」と呼ぶにふさわしい。
 赤血球や血小板、白血球の前身である「芽球」は、絶えず骨の骨髄で製造されている。
 ところが、この芽球ががん細胞に変化すると、本来白血球に分化するはずがそうならず、未成熟な細胞として増殖を続け、骨髄や血液中を占領し正常な白血球や赤血球を追い出してしまう。
 そのため本来白血球や赤血球が果たすべき役割が果たせなくなり、免疫系のバランスが崩れ、放っておくと死に至る。
 正常ではない細胞が身勝手に増殖する点でいえば、他の臓器がんと同様の性質を持っている。
 白血病は、早期がんとか進行がんなどという区別がなく、がん細胞を手術により切ったり、取ったりするわけでもない。初期にはどこかが痛んだり痩せたりすることもない。
 したがって、自覚症状のないうちに会社の健康診断やちょっとした血液検査で発見されることが多い。
 あるいは、貧血やなかなか血が止まらない、といったことなどから異常を感じて検査を受け発見されることもある。
 白血病とはいっても白血球だけでなく他の血球成分の変化による症状からわかることもある。
 病態が進めば、貧血による動悸や息切れ、全身の倦怠感、皮下や歯肉からの出血、免疫力低下による原因不明の高熱、尿路感染、口内炎などが起こってくる。
 このような症状が出るころには、通常1立方ミリメートル中6000~8000個の白血球が、1兆個以上にもふえているともいわれる。
 白血病の種類(日本人に多い順から)急性骨髄性白血病 慢性骨髄性白血病白血球のうち、骨髄系細胞の顆粒球(好中球、好酸球、好塩基球)から発生する急性リンパ性白血病 慢性リンパ性白血病 リンパ系細胞のリンパ球から発生する白血病の疑いがあるときには、胸骨や腰骨から骨髄液を採取し、遺伝子検査も含め白血球細胞の状態を調べて診断を下す。
 診断のポイントは白血球数、染色体異常、白血球細胞の表面抗原、年齢などである。誤解を恐れずにいえば、白血病はドラマ性がある。それは、比較的小児や若い人にも多い病気であり、時に急性の場合には突然の病状悪化を認めるなどの意外な展開を見せることがあるからだろう。
 私自身白血病と聞けば、感染症を予防するクリーンルーム、抗がん剤のために抜け落ちた髪の毛、貧血のためにいつも透き通ったように白い肌、健気に病気と闘う姿…といったことを想像する。
 故夏目雅子さんから、美人薄命といった印象もある。
 最近では原因解明や治療法も進み、小児なら「治る病気」になりつつある。
 骨髄移植も少しずつ認知されつつあり、治療の点でいえば将来的には明るい期待の持てるがんといえるかもしれない。

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