医学博士・医学ジャーナリスト
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植田 美津恵
日本の医療・福祉・健康を考える

Production著作/論文

コラム「がんについて」コラム「がんについて」の連載。

4月24日 「がん」について 23
胆道(胆のう・胆管)がん

 当たり前であるが、どの臓器も、他の役割を担う臓器と密接な位置関係にあり、これがなかなか複雑である。
 肝臓周囲にある胆のうや胆管を総じて「胆道」と呼ぶが、その始まりは、肝臓の中の細い胆管が集まった「肝内胆管」で、それが肝臓の外に出て一本の総肝管を形作り、その総肝管が胆のう管や膵管と合流し、十二指腸とつながっている。下を噛みそうな名称が続くが、簡単に言えば、肝臓の中にある管を「肝内胆管」、肝臓の外にある管を「肝外胆管」と名づけて区別をし、肝臓の外にある太い管から、さらに胆のうや膵臓にのびる管に分かれ、十二指腸や小腸まで続いているという具合である。
 これらのいずれかにできるがんを「胆道がん」と呼び、できる部位によって「胆管がん」「胆のうがん」、肝内胆管が十二指腸とつながる部分にできる「乳頭部がん」に分けられている。
 ただし、肝臓の中にある「肝内胆管」にできた場合は、肝臓がんとしてみなされる。厚生労働省の死因統計でも、「肝および肝内胆管」と「胆のうおよびその他の胆道」というように、一本の管でも肝臓内にある場合と外にある場合とは別の臓器とみなし、違う患者として位置付けられている。胆道がん、つまり「胆のうおよびその他の胆道」にできるがんによる死亡者数は、昭和35年には男女合わせて1,200人弱であったが、1990年には10倍の12,000人、98年は15,000人と、年々増える傾向にある。
 全体的には女性の方がやや多いが、胆管がんは男性に多いというように、細かく見ていくとそれぞれに違いが出てくる。胆のうがんは女性に明かに多く、年齢では50歳代から増加し始める。偶然とはいえ、母親を胆のうがんで亡くしたという人が周囲に2、3人いるため、感覚的にもまだ若い女性に多いという印象がある。
 他のがんと同様、胆道がんの症状も初期にはわかりにくい。その中でも気が付きやすいものに「黄疸」がある。これは、がんができることで胆管の中が詰まってしまい、胆汁の流れが悪くなるため、行き場のなくなった胆汁が胆管から逆流して血管に流れ込むことで起こる。胆汁の黄色い色素である「ビリルビン」の影響で、皮膚が黄色くなる現象である。
 その他には、だるい、食欲がない、背中や腰が痛い、便が白っぽくなるなどの症状が出るが、黄疸以外は曖昧模糊としてはっきりしないものが多い。今でこそ、輸入物も増え、色々な種類の果物を手にすることができる。
 が、一昔前にはみかんとりんごが果物の王道であった。みかんばかり食べていると、手の皮膚が黄色くなったものだ。黄疸も、みかんの食べ過ぎと思い込んで、よもや重大なサインと気づかない場合がある。実際にそう言い張る人がいた。
 黄疸の場合は、目の白目も黄色く濁ってくるし、皮膚のかゆみなども合わせて感じる事も多くなる。病気であればそれが消滅することもない。何事も強すぎる思い込みは危険である。

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