医学博士・医学ジャーナリスト
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植田 美津恵
日本の医療・福祉・健康を考える

Production著作/論文

コラム「がんについて」コラム「がんについて」の連載。

4月17日 「がん」について 22
進む肝臓がんの治療法

 肝臓がんの治療というときには、肝臓がんそのものの治療という意味もあれば、広く、肝炎から肝臓がんに移行するのを予防するための治療ととらえることもできる。
 つまり、C型のウィルスを根本的に排除するインターフェロン療法も、肝臓がんにならないための「予防治療」である。インターフェロン療法が登場するまでは、肝臓の炎症をおさえたり肝機能を改善する治療法しかなかったが、現在では抜本的な治療が可能になり、ウィルスをなくすことに成功した例がかなり増えてきた。
 ただ、C型ウィルスにはいくつか型があり、抵抗性の強い型の場合はウィルスの量を減らせても排除するにはいたらないし、ウィルス量が多すぎても治療効果が出ない。
 また、発熱や脱毛などの副作用もあって、強い苦痛を伴う場合もある。特に副作用のひとつである「うつ状態」やそのために自殺に至ったような深刻なケースも、一時目立って報告された。
 治療を受ける側としては、まず、どういう副作用があるのかをあらかじめきちんと知っていることが必要である。最近では、インターフェロンにプラス抗ウィルス剤を組み合わせての治療がさらに治療効果を高めることが知られており、肝機能やエコー、ウィルスの型、量などを十分に考慮し治療を進めれば、肝臓がん予防はもとより肝炎そのものを完治させる可能性が高まった。
 肝炎が進行し、肝臓がんになった場合は、肝部分切除や、肝動脈を詰まらせ、がん細胞に栄養がいかないようにする経動脈的塞栓療法、エタノールを直接がん細胞に注射し、凝固させて殺す方法が一般に行われる。患部に液体窒素を注入し、がん細胞を凍結する凍結療法などもある。
 また、ときどき新聞で紹介される生体肝移植や脳死の人から移植する方法も、治療法のひとつとして普及しつつある。
 何事も早期発見が決め手であることに変わりはない。ある程度進行した肝臓がんでは治療の選択肢が限られてしまうために、精神的にも余裕がなくなる。早期なら、色々な方法の良い点悪い点を整理することができ、自分で考え納得するだけのゆとりが感じられるだろう。
 ただし、注意しなければならないのはむしろ専門医の選択であり、肝臓が専門といっても治療方針にはかなり差があるため、よく吟味することが重要である。
 手術治療には当然ながら危険も伴う。同じ肝臓がんでも肝硬変がある場合とそうでない場合、あるいは肝機能がいい人と悪い人、出血しやすいケースとしにくいケース等々、それぞれに危険度や予後が異なってくる。
 手術がうまくいったとしても、その後の管理が悪ければかえって悪化することも珍しくはない。何事も慎重が第一であり、その中には、主治医をどう選ぶかも重要な要素のひとつである。
 経験豊富であることも大切だが、説明をきちんとしてくれて、患者の話をよく聞き、本人の意思を尊重してくれるかどうか、十分に見極めて欲しい。

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